キラキラと光り輝く、優しい笑顔に包まれて
友情の証
しとしとと降り注ぐ雨が蒸し暑い夏を演出し、部屋の中もカビ臭くさせる。
重たい瞼と身体を引きずりクローゼットの中にある黒くて1番地味な服を探す。
喪服なんてものはクローゼットの中にはない。身近にいる人の死に触れたことのない私には無縁なものだったから。
真っ黒でラメや飾りが付いていないシンプルなワンピースを手に取り、上から同じく黒いカーデを羽織る。
トントンっとドアがノックされ、無言のまま開くのを待った。
「陽亮君、来たわよ」
悲しげな表情で笑いかけるママに無言のまま頷く。
サクラの事故を知らされてから、私は笑顔をどう作ればいいのか、どうやって会話をしてきたかさえわからなくなった。
ママやパパに心配をかけているのはわかっている。食事もまともに摂れない私を気遣っているのもわかる。
ただ、今は少しだけ私を取り巻く世界から逃れていたいだけなのかも。
笑顔も会話も食事も。
今私の住む、不確かで現実味を帯びない世界には必要ないものだから。