キラキラと光り輝く、優しい笑顔に包まれて
カエデの家に着くと、待ち合わせていたのかツバキと共に傘をさし家の前で待っていた。

後部座席のドアを開き、二人は乗り込む。
振り返り二人を見ると私と同じく眼を赤く腫らしていた。


「おはよ……って時間でもないか。陽亮君、わざわざありがとね」


張りのない声で、それでもしっかりと言うツバキ。


「気にすんなって」


ルームミラーで後ろの二人をちらりと見ると、それ以降は真っ直ぐ前だけを見詰める陽亮の横顔。


誰も何も声にならない哀しみを抱えて重い空気の中、サクラの通夜が行われている斎場に着いた。


混雑した駐車場で開いたスペースを探し停めた。黒に覆われた世界を雨の中進み、斎場へと入る。

《江城家》と書かれた案内に従い道なりに進む。


受け付けを済ませて多くの弔問客を擦り抜け、前の方の開いた席を見付けた。


「俺、別のところにいるから、終わったらまた斎場前で待ってる」

「……え?でも席開いてるよ?」

「今日は三人だけの方がいいだろ」


頭を優しく撫でられて頷く。


「ありがと」


去って行く時、片腕を挙げ手を振ってくれた。
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