キラキラと光り輝く、優しい笑顔に包まれて
私の手を握るカエデの手も震え、どっちの手が震えているのかさえわからない。


「嘘でもなんでもないんだよ……これは現実で、変えられないんだよ‼」


言った後、奥歯を食いしばり溢れそうな涙を堪えるカエデ。

カエデはサクラと1番長く時間を共にしてきた。けれどカエデが1番、この状況を受け入れようと必死になってる。



進行役の人がマイクで流れを説明した後、お坊さんが袈裟に身を包み現れ祭壇で経を唱え始めた。

それに合わせ、弔問客が焼香を順に始める。


前の方に座った私たちはすぐに順番が来て、立ち上がり列に並び順番が来るのを待つ。



私の番に来た時、お坊さんに一礼し、その後親族に向かって一礼をする。

その時、眼に映ったサクラの両親……特にお母さんは憔悴しきっていて、立っているのもやっとといった感じで、隣に立つお父さんに支えられていた。


そんなお母さんを見たら我慢が出来ず、顔を歪ませ涙が零れた。


流れるまま、弔問客に向かい一礼をして焼香をする。一抓みし、額まで掲げ、そして火の中に投じる。

パチパチと燃える焼香の香が漂い、場所を明け渡す前に目の前にあるサクラの遺影に向かい深く一礼した。
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