キラキラと光り輝く、優しい笑顔に包まれて
家に着き、帯を解けば開放感が突き抜ける。窮屈な足袋を脱ぎ、ボサボサな頭を掻いてお風呂へ直行した。


シャーっと熱いお湯が肌に触れると寒さで軋んだ肌がヤケドみたいに熱い。でも、温いお湯だと湯冷めしそうで熱さに耐えているとだんだんと心地良くなる。


適度に暖まり乾いたタオルで体中の水分を拭い、ドライヤーで髪を丁寧に乾かしていく。

乾ききった髪を巻く余裕のない時間。
ピンとゴムで簡単にアレンジして、お気に入りのニットを着る。


胸が開いた黒のニットに小さな十字架のシルバーネックレス。アレンジした髪から覗く耳には黄色いピアスはくすむことなく輝いている。

安物だったのに、輝きが変わらないのは大切に、大切にしているから。


ピンヒールのブーツを履いて背筋を伸ばして、5時だというのに夜みたいに暗い道を歩く。

家から遠くないバス停でバスに揺られ、駅近くの居酒屋を目指す。ほんの少しだけ緊張しながら。
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