キラキラと光り輝く、優しい笑顔に包まれて
だからいつの間にか『サクラ』という名前に存在に触れられずにいた。


けれど今日、敢えて触れてみる傷。
私たちは大人として認められた今日この日に、前に進まなきゃいけないんだ。

サクラの存在を忘れないためにも。


「もちろん覚えてるよ」


瞼を閉じ、長い睫毛を見せては懐かしげに言う。


「当たり前じゃん。サクラの言った一言一句だって忘れるはずないじゃん」


開かれていたメニューを閉じてカエデも口角を上げた。


乗り越えるべき時が来たのかもしれない。
恐れずに向かって行くべき時なのかもしれない。


サクラの死を受け入れ、それでもサクラの存在が確かにあったということを忘れちゃいけない。


逃げてばかりで私たちがバラバラになったとしたら、いつも支えてくれたサクラを否定することになるから。



サクラ――……

長い間待たせてごめんね。
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