キラキラと光り輝く、優しい笑顔に包まれて
数分後。
コツコツと木の床を鳴らせて渋店員が三度目の登場。
銀のトレイの上にシュワシュワした泡が立つビール。
一人一人に丁重にグラスを置き、最後の一つをどこに置けばいいのか迷う彼に、空いた席の前に置いてもらう。適当に食べ物をオーダーすると優雅な後ろ姿で去って行く。
冷えたビールはグラスを結露させ、半透明の液体を曇らせた。
「実はまだビールって飲んだことないんだよね」
カクテルしか飲んだことのない私は顔をしかめて言う。
「私もだよ」
カエデがグラスを覗き込み、どんな味か想像するような顔で言った。
「私は最初はいつもビールだよ」
ひと足先に社会人の仲間入りを果たしたツバキは、私たちより一歩先に行っている。
一筋の水滴がグラスを流れ、泡がさっきより少なくなった。
「じゃあ乾杯しますか」
カエデがグラスを手にとり掲げた。