キラキラと光り輝く、優しい笑顔に包まれて
入学式を明日に控え、ハンガーに掛かった真新しい制服に目をやる。サイズを合わせに行ったっきり、まだ一度も袖に手を通していない。


だって決めていたから。
次にこの制服を着る時は、身も心も大人な高校生になった時だと。


……身体は真の意味では大人にはなっていないだろうが、この際それくらいは問題なしと言い聞かせる。



そんなわけで、自分で自分に『おあずけ』をし、入学までは犬の待て状態でそれに従う。それでも何度か鏡の前で、制服を体にあててみたりはした。


明日からの高校生活に期待にお世辞にも大きいとは言えない胸を膨らませて、夜もなかなかベッドの中に入る事が出来なかった。



やっと、眠気が来たのは夜中の2時を過ぎた頃。

月も傾きかけ、遠くで猫が発情する声が聞こえて猫にも嫉妬する。


きっと必ずどこかにいる。
甘い声を私だけに囁いてくれる王子様が。

いつの日か会うその時までは夢の中で抱きしめてね。


キリンの抱き枕を抱き、妄想に耽りながら明日を夢見て眠りについた。


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