キラキラと光り輝く、優しい笑顔に包まれて
ピクピク引き攣る口許。
たいして話した事のない相手から呼び捨てにされるなんて初めてだし、愛称呼びなんて有り得ない。ちょっと馴れ馴れしい気がした。


でも、これからお隣りさんとして過ごしていく訳だし、ここで文句を言って険悪ムードになりたくはない。


「よろしく……、『栗生くん』」


『栗生くん』だけ少し強調して言ってみた。

あんな場面に遭遇したのもあるし、元々苦手なタイプで、仲良くする気なんて毛頭ない!


という事を口に出しては言わないけれど、『栗生君』とわざと強調する事でアピールしてみる。


「やだなー、『栗生くん』じゃなくて、ヨ・ウ・ス・ケって呼んでよ」


綺麗な顔立ちに満面の笑みを浮かべて言う陽亮。

たぶんコイツは自分の事を嫌う女がいるなんて、考えた事すらないんだろうなぁ。


ちょっと白けた目で見る私なんてお構いなしに、ニッコリ微笑んだままその綺麗な顔を近付けてくる。

何?何???


少し身構える私の耳元に、そっと顔を近付け──

「そ・れ・に。オレたちの仲じゃん」

耳に陽亮の息がかかるのを感じ、いくら嫌いな相手だと言っても、コイツも一応『男』。


男の子に免疫の少ない私は恥ずかしさと照れで、体中の血液が顔に集まったかと思える程に顔が紅くなるのを感じた。
< 80 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop