“幸せ”だって無くして気がついた 馬鹿な僕だから
「佐々木さんは仕事もテキパキこなす優秀なスタッフで、なにより人当たりがとても良かった。
患者さん達にも評判が良くて、
僕とのカウンセリングよりも彼女との世間話の方が気持ちが晴れやかになる
って言う患者さんもいたぐらいです。」
なるほど・・。そうやって遺族の懐にも入り込んでいったのか・・。
「・・・・でもね小西さん。」
椅子から立ち上がった野崎が、右足を引きずってカルテが置いてある奥の棚へと向かう。
何かを探すかのようにパラパラとめくった後、そこから1冊を取りだした。
「あの子と一緒に仕事をしていく中で・・・。
仕事中も・・終わった後の何気ない世間話も・・。
あの子と話をしていく中で、
僕はある疑問を持った。
本人は必死に隠していたようですが、
たまにフッと出る言葉遣い。
無意識に出る所作。
あの子がスタッフとして働き出してから何年か経った頃・・・僕は気付いてしまった。」