“幸せ”だって無くして気がついた 馬鹿な僕だから
「他2件は捜査中ですが、
この1件目の事件について、
我々は早川 ゴロウを容疑者として考えています。」
早川さん・・・ごめんなさい・・・。
アリバイが成立していて完全に“白”だけど、ここはダシに使わせてもらいますよ。
「・・・驚きました・・。
早川さんがですか?」
野崎は一瞬驚きの表情を見せる。
「先生にお伺いしたいのは事件前後の早川の様子についてです。
診察をする中で何か変わった様子は見受けられましたか?」
「・・・確かに早川さんは頭痛と毎晩見る悪夢を訴え、当医院を受診されました。
その・・迫田氏でしたっけ?
その男が出所して謝罪の手紙を早川さん宛に出したことで、
お嬢さんを失った事件がフラッシュバックしてしまったものだと考えられます。」
「それがきっかけ、
という考えも出来ますね。」
「しかし刑事さん、
早川さんはこちらで適切な治療とカウンセリングを施し、もう症状は見られなくなりました。
勿論迫田氏が何者かによって殺された事を、
“誰かが自分の為に仇を討った”
と解釈して精神的余裕が出来たのも要因かもしれませんが・・。
主治医から見て、
あの方は自分の心と闘っていただけで、
それを“他人への危害”という形にするような様子は微塵も感じられませんでしたよ?」
「・・・・そうですか。
最後に早川がこの病院を訪れたのはいつですか?」
「・・少しお待ち下さい。」