【短】あなたの声。
7時2分。
奏の部屋のインターホンを押す。
「結月?
入っていいよー。」
中から聞こえたいつもの優しい声。
「おじゃましまーす。」
部屋へ上がるとにっこり、嬉しそうな奏。
……別れ話は今日じゃないみたい…。
正直、ホッとしてしまった。
ばか、だね。
少し期間が延びただけなのに。
昨日とおんなじようにソファで後ろから抱きかかえられる。
「結月…、好きだ。」
あたしの大好きな声で甘く囁く。
でも、その『好き』って?
ホントは『結月』じゃなくて
『カオリ』って言いたいんじゃないの?
そのまま、深いふかいキス。
あたしの体を優しく抱き、そっと押し倒す。
―――ヤったら、ホントに遊びになるのかな?
カラダだけの関係。ってやつ?
奏の腕の中でそんなことを考えていた。
一つになった時、
閉じた目の向こうに誰を思い浮べた?
誰を想って、あたしを抱いたの……?