【短】あなたの声。
日曜日、普通のデートをした。
手を繋いで街をブラブラ。
楽しい。
はずなのに。
心から楽しめてない。
顔のチカラを抜くと無意識に
悲しそうな顔をしてしまう。
「どした?
それ、おいしくない?」
慌てて笑顔を“作る”
「…ううんっ!
すっごいおいしいよ!?
少し食べる?」
「食べさせて?」
一般的に言う、『あーん』ってヤツ?
恥ずかしいのを隠してフォークを奏の口に運んだ。
「ん。うまい。」
満足そうに奏が笑う。
『奢るから』と言われて入ったパスタ専門店。
もちろんおいしい。
だけど、いいの?
暇つぶしの相手にお金遣って。
街歩いてカオリさんに会っちゃったらどうするの?
って、どうするもないか。
『ただの遊びだよ』
あっけなく捨てられるのがオチ。