【短】あなたの声。
その後、映画を見た。
内容は青春的な感じで面白かった。
「面白かったなぁ。」
「うん。」
「もう、暗くなってきたな……。」
「そろそろ、帰ろうかな…?」
「じゃあ、家まで送る。」
また手を繋いで歩く。
ギュっと手を握られた瞬間あたしの中で感情が溢れた。
…好き。
奏が大好き。
遊びだって分かってもこんなに
好き。
奏が同じ気持ちにはなってくれなかったとしても……。
家に着くと寂しそうな顔をする奏。
これが、“本物”だったらいいのに。
心から寂しいと思ってたらいいのに。
「じゃあ、またな。」
「うん。今日はありがとね。」
「おう。」
「ばいばーい。」
最後まで元気なあたしを演じきって家に入った。
コトバも態度も“本物”が欲しい。
気持ちのある“本物”が……。
そんな、我が儘なあたしがいた。