【短】あなたの声。

「何処行くのー?」

「……知らない…。」


ポツリと答えて少し足を速めた。

「ちょっ、待ってって。」


その声と同時に腕を捕まれてしまった。

あー。
もしかして、ナンパってやつなのかな?

「行く場所ないなら、一緒にどっか行く?」

「行かない。」


サッパリ言い放つと、

「うわー、きついねー。
 そんなんだから、振られちゃったんじゃない?」


……ッ…!

グリっと胸の奥をえぐられた感じがした。


頬を伝うものが速さを増す。


「ま、俺は嫌いじゃないよー?」

そう言ってあたしの手を引っ張って行く。


『そんなんだから、』

じゃあ、あたしはどうすれば良かったんだろ…?

どうすれば、奏の“本命”になれたかな?


手を引かれていることも忘れて足が行くままに歩く。

「なんか、素直じゃん。
 最初から着いてこればいいのにー。」


すぐ、前で聞こえる会話も遠く聞こえる。

頭の中はどうしようとかよりも、

“どうすれば良かった…?”


って、後悔ばかり。
< 27 / 35 >

この作品をシェア

pagetop