【短】あなたの声。
「何処行くのー?」
「……知らない…。」
ポツリと答えて少し足を速めた。
「ちょっ、待ってって。」
その声と同時に腕を捕まれてしまった。
あー。
もしかして、ナンパってやつなのかな?
「行く場所ないなら、一緒にどっか行く?」
「行かない。」
サッパリ言い放つと、
「うわー、きついねー。
そんなんだから、振られちゃったんじゃない?」
……ッ…!
グリっと胸の奥をえぐられた感じがした。
頬を伝うものが速さを増す。
「ま、俺は嫌いじゃないよー?」
そう言ってあたしの手を引っ張って行く。
『そんなんだから、』
じゃあ、あたしはどうすれば良かったんだろ…?
どうすれば、奏の“本命”になれたかな?
手を引かれていることも忘れて足が行くままに歩く。
「なんか、素直じゃん。
最初から着いてこればいいのにー。」
すぐ、前で聞こえる会話も遠く聞こえる。
頭の中はどうしようとかよりも、
“どうすれば良かった…?”
って、後悔ばかり。