Piano~ピアノ~
賢一くんを招き入れた玄関の扉が閉まり、靴を脱いで中に入ろうとした瞬間、後ろから抱き締められて驚いた。
――やはり先程の言葉は、意味を為さなかったか……。若い男を自宅に招き入れる時点で、こうなる事は想定内だったけど、玄関で抱き締められるとは。しかも思う存分、締め付けてくるなんて。
(私を締め殺す気なの!?)
あまりの苦しさに抵抗を考えたけど抱き締めるだけで、それ以上のことをしない彼に驚いてしまった。
史哉さんなら……そこから首筋にキスをして後ろから回してる片手を私の頬に添えて、振り向かせる体勢にもっていき、唇に熱いキスをする。
そんなことを考えていると、突然放り出す勢いで賢一くんが離れた。彼の顔を振り返りながら見ると、しまったと書いてあるような感じに見えた。
そんな彼を玄関に置き去りにして、そのままキッチンに向かった。
突然抱き締められたことで史哉さんの温もりを思い出し、冷静さを失っている自分。その気持ちを落ち着かせるべく、急須に玄米茶の茶葉を入れてポットに入っているお湯を注ぐ。
茶葉が開くまで深呼吸、いつもの自分を取り戻さなければ――
多少落ち着いた所で、マグカップにお茶を入れる。美味しそうな薫りに、心が更に落ち着いた。
一呼吸置いてから思いきって叫ぶ。
「いつまでそこにいるつもり? マジで追い出すよ」
慌てて中に入って来る賢一くんに、マグカップを手渡す。一口お茶を口にしたら、とても落ち着くことができた。
彼をコタツに座らせて、窓辺に移動する。
ストーカーは、どうしてるだろう?
カーテンの影から覗くと電柱に寄り添うように、こちらを見上げていた。やはり今日もつけられている、どんだけ暇人なのやら……。
内心憤怒しながらリビングの電気を消してやった。その行動に首を傾げながら賢一くんが不思議そうに私を見る。
「恋人同士、部屋が暗くなったら、やることはひとつでしょう」
そう伝えると、変な緊張感を漂わせる始末。多分、顔が赤くなっているに違いない。
こっそりカーテンから覗いて見ると案の定、肩をガックリ落としたストーカーがとぼとぼ去っていくのが確認できた。
(――作戦成功!)
心の中でガッツポーズをしている私に賢一くんは、
「叶さん、何だか淋しそう……」
控えめな声で言う。だけど私、めっちゃ喜んでるんですが?
「俺、頼りにならないかもしれないけど……」
なんて自分の気持ちを、どんどん吐き出してくる。
私が史哉さんに伝えたい言葉ばかりを羅列され、驚きと共にイライラがつのった。どうしてそんな風に素直に、想いをぶつけることができるんだろう。
相手の迷惑とか考えたことがないのかな。若いからって、何をやってもいいと思ってるの!?
気づいたら彼の唇に自分の唇を押し付けていた。無意識の行動に驚きつつ、直ぐに離れる。
ポカーン(○д○)とした、賢一くんの顔……。何が起こったか、分からないようだった。
「ウルサイ、ギャーギャー騒がないで」
思わず怒鳴ってしまう。こんなことするつもりじゃなかったのに、何やってるんだろ。いくら史哉さんとしてないからって4つも年下の相手に、自分からキスするなんて最低だ。
賢一くんを自宅から追い出して、リビングでひとり反省する。
自分の想いがどこに向かっているのか、これからどうしたいのか。考えることがたくさんありすぎて、どこから手を付けていいかわからない状態だった。
史哉さんといるときの自分。賢一くんといるときの自分。私らしいのは、どっちなんだろう……。
――やはり先程の言葉は、意味を為さなかったか……。若い男を自宅に招き入れる時点で、こうなる事は想定内だったけど、玄関で抱き締められるとは。しかも思う存分、締め付けてくるなんて。
(私を締め殺す気なの!?)
あまりの苦しさに抵抗を考えたけど抱き締めるだけで、それ以上のことをしない彼に驚いてしまった。
史哉さんなら……そこから首筋にキスをして後ろから回してる片手を私の頬に添えて、振り向かせる体勢にもっていき、唇に熱いキスをする。
そんなことを考えていると、突然放り出す勢いで賢一くんが離れた。彼の顔を振り返りながら見ると、しまったと書いてあるような感じに見えた。
そんな彼を玄関に置き去りにして、そのままキッチンに向かった。
突然抱き締められたことで史哉さんの温もりを思い出し、冷静さを失っている自分。その気持ちを落ち着かせるべく、急須に玄米茶の茶葉を入れてポットに入っているお湯を注ぐ。
茶葉が開くまで深呼吸、いつもの自分を取り戻さなければ――
多少落ち着いた所で、マグカップにお茶を入れる。美味しそうな薫りに、心が更に落ち着いた。
一呼吸置いてから思いきって叫ぶ。
「いつまでそこにいるつもり? マジで追い出すよ」
慌てて中に入って来る賢一くんに、マグカップを手渡す。一口お茶を口にしたら、とても落ち着くことができた。
彼をコタツに座らせて、窓辺に移動する。
ストーカーは、どうしてるだろう?
カーテンの影から覗くと電柱に寄り添うように、こちらを見上げていた。やはり今日もつけられている、どんだけ暇人なのやら……。
内心憤怒しながらリビングの電気を消してやった。その行動に首を傾げながら賢一くんが不思議そうに私を見る。
「恋人同士、部屋が暗くなったら、やることはひとつでしょう」
そう伝えると、変な緊張感を漂わせる始末。多分、顔が赤くなっているに違いない。
こっそりカーテンから覗いて見ると案の定、肩をガックリ落としたストーカーがとぼとぼ去っていくのが確認できた。
(――作戦成功!)
心の中でガッツポーズをしている私に賢一くんは、
「叶さん、何だか淋しそう……」
控えめな声で言う。だけど私、めっちゃ喜んでるんですが?
「俺、頼りにならないかもしれないけど……」
なんて自分の気持ちを、どんどん吐き出してくる。
私が史哉さんに伝えたい言葉ばかりを羅列され、驚きと共にイライラがつのった。どうしてそんな風に素直に、想いをぶつけることができるんだろう。
相手の迷惑とか考えたことがないのかな。若いからって、何をやってもいいと思ってるの!?
気づいたら彼の唇に自分の唇を押し付けていた。無意識の行動に驚きつつ、直ぐに離れる。
ポカーン(○д○)とした、賢一くんの顔……。何が起こったか、分からないようだった。
「ウルサイ、ギャーギャー騒がないで」
思わず怒鳴ってしまう。こんなことするつもりじゃなかったのに、何やってるんだろ。いくら史哉さんとしてないからって4つも年下の相手に、自分からキスするなんて最低だ。
賢一くんを自宅から追い出して、リビングでひとり反省する。
自分の想いがどこに向かっているのか、これからどうしたいのか。考えることがたくさんありすぎて、どこから手を付けていいかわからない状態だった。
史哉さんといるときの自分。賢一くんといるときの自分。私らしいのは、どっちなんだろう……。