屑も積もれば屑となる
ようこそ

記憶の底に

「それで?結果はどうだった。」
「うん。せいこう……した。」
「ユィンと俺で忍び込んだが、なんせブツの量が多い。確保した侵入経路も、ちと遠回りだし……道も狭い。偵察なら問題ないが、見つかっても問題ないよう、警備を分散させるか、注意を引きつける囮になるやつが必要だな。」
「ふたりずつくらい……ひつようかも、しれない。けど……。」
「いかんせん、人員が少ないからねえ。」
誤魔化すための嘘のつもりだったが、本当に熱がぶり返してしまったらしい。またソファに寝かされながら、ユィン達の会話を盗み聞いていた。いや、もう『家族』になってしまったというなら盗み聞くという表現は適切ではないのだろうか。
「でも、まあ、ユィンに一目惚れしてOKしちゃうなんて。……警戒心がすっごく強いのかと思ってたけど、結構面白いわよね、君。」
「ど、なっ、やめろっての!そ、そんなんじゃな……なくはない……けど……。」
あわててつい起き上がってしまった俺を宥めて寝かせながら、楽しそうに話し始めた。
「お母さんがわりとしてはあの子もそんな年頃になったのかと思うと嬉しい限りだわぁ。それにここじゃそんな浮いた話もないし、正直楽しいのよね。」
「お母さんって柄かね、あんたって。」
「……歳的に言うならどっちかっていうとお姉さんかしらね?」
耳聡く俺の呟きに反応した。俺の思ったこととはずれた反応で、すこし苛立った。
「そうじゃなくて。おかあさんっていったらあんたみたいに香水の匂いじゃなくて、もっと、そんな綺麗な手じゃなくて……もっと—……なんの話だっけ。」
ふと頭が痛んだ。熱のせいだろうか、頭が霞みがかってきてなにも考えられない。瞼も重い。気を張っていないと閉じてしまいそうだ。
「そう。とりあえず今は寝てしまいましょう。……それで、起きたら君の名前を決めましょう。だからおやすみ。」
胸のあたりをとん、とん、と優しく叩かれる。半分閉じた瞼ではツォンミンの表情はもう見えない。けれど、叩かれた胸から懐かしさがこみ上げた。目を閉じると一筋涙が溢れたのを頬に感じた。
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