白馬の王子は待ちません
気になって、横を盗み見ると。
ヒカルは、まっすぐコウキを見つめながら
次の言葉を待っている。
そして、コウキは、
少し黙ってうつむいた後…
大きく息を吸って、顔を上げた。
時間をおけば…我にかえって…
よく考えたら、やっぱり無理って
気がつくんだろうなあと。
そりゃそうだよ。それが一番いいんだって
思っていたはずなのにさ。
時間が経てば経つほど、だんだん…
俺、ソワソワしてきて。
忘れられてしまうのか…と思ったら、
どんどん焦って。
…気づいた。
俺は…
忘れられたくないんだって。
頭で色々考えても…
俺が抱える問題の正解は、わからないけど。
それでも。
この気持ちを…伝えてもいいだろうか…。
コウキは、苦しそうな顔をしてあたしを見た。
ごめん。千恵…。
俺、ヒカルさんに…忘れられたくないんだ。
どんな結果になろうと、今は…
この気持ちだけは、確かだと思う。
ドキドキと…
うるさかった心臓が聞こえないくらいに
時間が止まった気がした。
ぎゅっと目を閉じて、ゆっくり開けてみる。
苦しそうな顔のコウキが、まだそこにいた。
そっか。
…わかった。
横を見ると、ヒカルも驚いた顔をしたまま
固まっていたけど、あたしと目があって
泣き出しそうな顔になった。
こら。泣かないの。
ヒカルの顔を見たら、悲しい気持ちが
溶けていく気がした。