キンダーガーテン三   ~それぞれの居場所に~
「雅道君、おはよう。今日はおばあちゃんと一緒なんだね。」と

声をかけながら、目だけでパッと全身のボディーチェックをする。

ヨシ!!問題なし。

手を繋ぐと………う~ん、ちょっと温かい??

子供は大人よりも体温が高い。

おまけに朝は、まだ眠いから温かい子もいて………分かりにくい。

「雅道君、ちょっと温かいんだけど……昨日寝るのが遅かった?」

唯の質問に、答えたのはおばあちゃん。

「やっぱりそうですか?
私も手を繋いで来ながら、温かいなぁって思ったんですよ。
先生、やっぱり今日は連れて帰ります。
お騒がせしてすみません。」

「担任の彩先生には、私から伝えておきますね。お大事に。
雅道君、早く元気になってまた遊ぼうね。」

手を振って帰って行く二人を見送る。

その後も次々登園して大忙し。

左側は、ベテランの恭子先生だからと任せ切っていた。

ふと、登園の波が途絶えたから……恭子先生の方を見ると

ちょうど登園してきた沙羅ちゃんとお父さんに挨拶していた。

何気なく会話を聞いていると………随分親しそうで驚いちゃった。

どうやらご近所さんみたい。

それで左側が良いって言ってたんだ。

初めてのことだと、少しでも知り合いの方が安心するもんね。

唯の方にも、また登園してくる子が増えたからそちらに目を向ける。

8時を過ぎてくると、お勤めの保護者が減って……時間にゆとりが出来る。

この頃になると、ママ達のおしゃべりが盛んになって

「唯先生、今年は実習生が多いけど……何人辞めるの?」

「唯先生は辞めないでしょう?」

「この間、彩先生がパン屋のお兄ちゃんと一緒にいたけど……彼氏??」

「あぁ!あの人は、彩先生にお家を貸してる大家さんらしいよ。」と

ヒヤヒヤする内容の会話ばかりで、逃げ出したくなる。

振り向くと、まだ沙羅ちゃんのパパとおしゃべりしている恭子先生。

揉めてないよね?

心配になり「ちょっとすみません。」と、お話し中の保護者に断って

恭子先生の方に近づいてみる。

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