キンダーガーテン三   ~それぞれの居場所に~
それから間もなく…………

視線を感じるようになったの。

振り向いても、誰もいないし………気のせい??とも思うけど……。

なるべく一人にならないようにして………。

明るい道を通るようにして…………。

自己防衛を始めて2週間。

「あの…………すみません。伊藤唯さんですか?」と

30歳くらいの、綺麗な女の人に声をかけられた。

「………はい。
あの………どちら樣ですか?」

今日はお遊戯会の曲決めで、年少組二人で遅くまで話し合ってたの。

先生は、園長先生のお供で幼稚園連盟に出ていて遅くなるって。

コウ君が「送って行くよ。」って言ってくれたんだけど……

家の遠い咲ちゃんを送ってくれるように頼んだんだぁ。

やっぱり………唯も送ってもらえば良かったかなぁ??

唯の名前を知ってるって事は…………知り合い?

切羽詰まった表情が………ちょっと怖い。

「ここでは…………。
そこの公園までいいですか?」

直ぐそこの公園は、街灯が少ない上に遊具も寂れていて……気持ちがよくないの。

「公園は………。
だったら、そこの商店街に喫茶店があるから……」

「いいから来て下さい!!」

突然、腕を捕まれてズンズン引っ張られて行く。

「ちょっ!……嫌っ!………離して!!」

どんなに抵抗しても………何かにとりつかれたような女の人の力に

抗うことが出来ない。

あまりの恐怖に………大きい声を出したいのに………出てくれない。

ただ恐くて、涙だけがこぼれる。

…………………先生!!助けて!
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