キンダーガーテン三   ~それぞれの居場所に~

ストーカー

園全体がモヤモヤしたまま、目の前に迫るお遊戯会に

心を入れ替えた。

ウチのクラスは、ディズニーの曲に合わせて

プリンセスと王子様に。

小さな紳士と淑女は……色とりどりのタキシードとドレスに包まれて

本当に可愛いの。

不織布やレース、チュールやリボンを使って

一人一人、好きな色で作ってあげる。

この間の事件から、なるべく持ち帰って仕事をすることになった。

ただ、車のある先生は良いけど………ないと大変なんだ。

私は……コッソリ先生に持ち帰ってもらえる用に

途中まで手で持って、帰るふりをするの。

今日も……

重い荷物を抱えて歩いていたら………

「ちょっと!」と肩を捕まれ、荷物が全て道路に散らばった。

「キャッ!」

びっくりして大きい声を出すも…………暗く人通りの少ない夜の商店街では

助けてくれる人もいない。

逃げたいけど、もう直ぐに迫ったお遊戯会を考えると

衣装を置いて行く訳にはいかない。

ガタガタ震える足に、一歩も進む事が出来ない。
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