キンダーガーテン三   ~それぞれの居場所に~
電車に揺られ……家の前まで来ると

…………見覚えのある車が止まっていた。

……………………………………先生。

何を話したら良いのか分からないから……

逃げるように、車の横を走って家に帰った。

慌てると思うように、手が動かず

鍵にもたついていたら、頭上から『おかえり』って……

「あっ……………あの…………」

「何処にいた?」

「えっと………尋ちゃんのところ……」

「嘘つくな!!
尋ちゃんから電話が入ったよ。
『お姉ちゃんの携帯が繋がらない』って…
どうして電源を切った?」

「………………………。」

ドアを開けて中に逃げ込もうとしたら……一緒に入った先生に

壁と体で囲われた。

「…………あの…………先生。
…………………………………………………別れよう。………………………別れて。」


「はぁ?!」

眉間に鋭いシワが寄り………睨みつけられた。

「加山のせい?」

首を振る唯の顔を……腰を屈めてマジマジと見る。

「……………………本当に別れたい?」

「……………………うん。………………………別れたい。」

「だったら……どうして泣く?」

「別れたい……別れよう。…………別れて下さい。」

質問に答えず、泣きながら繰り返す唯に……

ため息をついて体を起こす。

「わかった。」

そう呟くと、頭をひと撫でして………出て行った。

………………………………。

……………『わかった。』

先生は確かに………そう言った。

…………これでおしまい?………………別れたの?…………………………。

あっけない最後に

遠ざかる車の音を聞きながら………泣いた。

……………………………別れたくないよぅ……………………
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