キンダーガーテン三   ~それぞれの居場所に~

キス……2

「乾杯~!!」

「お疲れ~!」

カラオケに着いて、四人は直ぐにアルコール。

唯にはいつものカルピスを注文して、まずは乾杯。

咲ちゃんの話しを聞いて、ギクシャクしたのは二日前。

あまりに、いつもと変わらない時間。

「唯ちゃんまたご飯抜いたでしょう?」

唐揚げにポテト、サラダと………次々に取ってくれる四人。

お皿の上のピーマンに……固まっていたら

「食べなさい」って…チラッとにらみを効かせる彩ちゃん。

渋々口に入れる唯に

「エライエライ!」と頭を撫でる梓ちゃん。

さっそく歌い始める夏苗ちゃんは…やっぱりマイペースで………

…………………………………何も変わらない。

どのタイミングで、話しを持ち出したらいいのか………戸惑っていたら

三曲目が始まる頃に

ピン!!って………デコピンされた。

「痛い!!」

オデコを押さえて彩ちゃんを見たら………

目にはいっぱい涙が溜まってて……「ごめんね。」って抱きしめられた。

ごめんなさいは…唯だよう。

「彩ちゃん………あの……」

話し始めた唯の言葉を遮って

「一生ばらす気なんて、なかったのに………
バカ唯のせいで、話しちゃったよぅ~。」って…泣きながら笑う彩ちゃん。

唯のせいで、ばらしちゃったの??

咲ちゃんじゃなくって???

話しが見えずに戸惑っていたら

「唯ちゃんが可愛い過ぎて、先生に『自分が原因だ』ってばらしたの。
ホント、彩は唯ちゃんに甘いからね!」

「…………嘘。」

「ホント。アホでしょう?
片思いの男より、唯ちゃんの方が大切みたいだよ。」

「咲なんて、失恋したばっかりなのに
彩にムチャクチャ怒られたんだよ!!あれは………三キロは……痩せたね!!」

「あぁ~あ。
恋より友情を取る、カッコイイ女を演出してたのに…。
パァ~になっちゃったよぅ~。
おまけに、先生には……こんなカッコ悪い形で告白することになるし……最悪だよう。」

笑いながら嘆く彩ちゃん。

「どうして?」

「結局、唯ちゃんが一番なんだよ。
誰も……唯ちゃんが辛そうにしてる顔を……見たくないの。」

「唯ちゃんには…敵いませんねぇ~」

みんな……からかいながら笑っているのに………

一緒に笑うことなんて出来ないよぅ~。

「えぇ~ん……………」

泣きじゃくる唯なんて、お見通しの四人は…

「あぁ~ヨシヨシ。」

「何でこんなに守りたくなるんだろうねぇ。」

「困ったちゃんは…早く引き取ってもらおうねぇ~」

「はい、ティッシュ。」って………。

バタバタしてる間に、ドアが開いて

「また泣いてる。」って…苦笑しながら先生が入ってきた。

「旦那が迎えに来たから、帰ろうねぇ~」

サッと荷物をまとめて、唯と一緒に押しつける。

「後のフォローは、任せたよ!」

「今週末は、四人で押し掛けるからヨロシク~」

「しっかり捕まえておかないから、こうなるんだよ!」

「焼肉、予約するよ!」

口々に話す三人の後に

「先生、ごめんなさい。
唯ちゃんのこと…………お願いします。」って頭を下げる彩ちゃん。

「うん。」って彩ちゃんの頭をポンと叩いて

「また明日!」って…唯の手を引いて出て行く先生。

「ック……待っ………って……ック」

先生の手を引いて止めると

彩ちゃんの目を真っ直ぐに見て……「ありがとう」って……

言い訳も……ごめんなさいも……違う気がしたから。

ニッコリ笑った彩ちゃんに

「また明日ね。」って言われて……一緒にドアを出た。
< 39 / 149 >

この作品をシェア

pagetop