あした晴れたら散歩に行こう
*(3)最初のピンチ*
 部屋のドアをたたく音で目が覚めた。

「なっちゃん、なっちゃん、まだ寝てるの?咲ちゃん迎えに来てるわよ。」


あ~~!寝坊しちゃった!早くしたくしなくちゃ・・ 
・・・って、私、毛むくじゃらだった・・
おまけにちっこいし・・声が変だし・・


ちょっと!これって、どう見ても犬のトトじゃん!


トト!!会いたかったよ~!!。。。

って、馬鹿なこと言ってる場合ではない。とりあえず、どうにかしなくちゃ。

「なっちゃん!なっちゃん!早くしなさい!」ママはドアをドンドンたたいてるし。

う~~、パニックになりそう~~~

あ、そうだ!!手紙だ!


 私は急いで机の上にかけあがってボールペンを持った。でもちっこい犬の身にはその重たいこと。ようやっと両手でボールペンをかかえて、紙によたよた字を書いた。字というかまるでミミズのようなはちゃめちゃな文字だった。でも何とか読める。

よし、これをドアの隙間からそ~っとだしてと・・

「まあ!なっちゃん、これ何?汚い字。・・・とにかくここをあけなさい!!」ママこそパニくっていた。

 きっと娘が登校拒否にでもなったと思ったのだろう。でも、それでもいいや。いや、そのほうが都合がいいかも。しばらくこうして自分の部屋にこもっとけば、だれにも姿を見られなくてすむ。その間に犬からもどる良い方法が何か見つかるかもしれない。

 部屋の前でわめいていたママは、そのうちあきらめたらしく、ぶつぶつ言いながら下に下りていった。このメモをもって・・


『が・つ・こ・う・い・か・な・い』

 

 咲、ごめんね。一緒に行けなくて・・しばらくみんなの前に姿を出せないけど、私のこと覚えていてよ・・犬になっちゃたのよ・・わたし・・

 そのとき、なんだかすごい悲しくなって涙が一粒ほおを流れた。(正確には毛がじゃまして流れてないけど・・)そして、そのあとは号泣だった・・

わお~ん、わお~~ん、うううう~~~~・・・・



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