言葉はいつも想いに足りない

10年という時間は
あまりにも長かった。

息子なのにかける言葉が
見つからなかった。

気まぐれで言った訳ではない。
妻が亡くなったからではない。
出来る事ならずっとそうしたかった。

妻への愛情はなくなったとしても
匠海の事だけは愛してた。
何年も妻と親権を争った。
でも、負ける事は当然だった。

家庭を顧みない父親に
世間が微笑むはずなどない。
当然のごとく匠海は妻が引き取った。

空虚感と共に家へ帰ると
笑顔の葵が出迎えてくれた。
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