星空の下で
 そして、また七夕の日が巡って来る。

 今年もまた1人の七夕の夜だ。

 週末の金曜日の夜ともあって、人出は多い。

 ゆかたはあの日からタンスにしまわれたまま。

 今年も着ることはない。

 明日の土曜日には、いつもの友達と昼間に見に来るのだけれど、今日は一日早く1人で来た。

 あの時、書けなかった思いを、短冊に書くために。

 友達と一緒に来た時には、書けない様な気がするから。

 当時よりは笹飾りの減った歩行者天国の道を歩く。

「え?」

 横を通り過ぎた人を思わず立ち止まって振り返った。

 ま、まさかね。

 そんなはずはない・・・と思う。

 こんな偶然があるはずはないのだから。

「はい、一枚100円ね」

 赤い短冊を一枚買って、マジックペンが置いてあるテーブルへと向かった。

 願い事は一つ。

『彼に思いを伝える勇気が出ますように』

 今でも、忘れられなくて。

 当時と同じ思いのまま。

 連絡をしてまで、伝える勇気はない。
< 2 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop