ワケあり王子のオトし方

ああ、どうしよう。

どうしたらいいんだ、この展開。


星の数ほどまではいかないけれど、そう例えてもいいくらい私は少女漫画を読み漁ってきた。

お陰でいかなる場面でも冷静でいられるほど、知識を培ってきたけれど、こんな展開は初めてだ。


これは夢じゃないの?

薬品の香りが漂うこの場所に来てから、何度もそう思った。何度も瞬きをしたし、頬も抓って手の甲を叩いた。けれど、夢じゃなかったんだ。

だって、痛かったから。

そして、もう一つは――。


「痛くない?並木さん」


そう言って、王子様スマイルを浮かべる西園寺が目の先に居るのが、何よりの証拠である。


(…どうしてこうなった?)


不審に思われないよう低速スピードで視線を動かせば、自分で作った擦り傷と、それを消毒している男の手先が見える。


「う、うん…!」


そう言って、コクコクと頷けば、西園寺のヤロウは微笑んだ。


どうしよう。今になって、痛くなってきた。

自業自得、ざまあみろとしか言いようがないけれど、痛いものは痛い。
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