ワケあり王子のオトし方
「っ……、最低!盗み聞きしてたの!?」


「へ?」


目の前には、ぼろぼろと涙をこぼしている女子生徒がいた。


(待て待て待て、盗み聞きってなによ?)


そもそも誰なのよアナタ。私よりも顔面偏差値が低いくせに、いきなり怒鳴ってくるなんて。

人が何をしようが顔面偏差値は関係ない、と真琴にツッコまれそうだ。


私は現状を理解しつつ、か弱そうな女子の微笑みを浮かべ、小首を傾げた。


「私、なんにもしてないよ?購買に向かってただけで」


「噓つき!!購買に行くのにこんな場所通るわけないでしょ!!」


「あの、」


ああ、何なんだよこの子は。

私が盗み聞きなんてするわけないじゃないか。


そもそも、私は何の得もない事をする阿呆な人間じゃないんだから。

と、思ってはいても、口に出すことはない。

私は誰に対しても庇護欲をそそられるエンジェルなのだ。


(…えーと、よくわかんないけど、修羅場の後に遭遇しちゃった感じ?)


今も修羅場だけど、と自分でツッコミを入れた、その時。


「――ごめんね、並木さん」


アイツは現れた。
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