ワケあり王子のオトし方
「西園寺くん……」
取り敢えず、ヒーローよ待ってました的な感じで泣きそうな顔をしておいた私を、誰か褒めて欲しい。
もちろん、秒速で西園寺から目を逸らしたけど。
(なにこれナニコレなんだこれ!)
空き教室から泣いている女子生徒と西園寺が出てくるなんて、中で起こっていたことは一つしかないじゃないか。
(こ、こくはくっ…!)
そしてフラれたアナタ。
「高橋さん」
現れた西園寺は、私を背に庇うように間に入った。
一刻も早く逃げ出したい駆け出したいという気持ちが止まらない。助けて神様。
「並木さんは関係ないよね。八つ当たりをしないでくれるかな?」
「なんで…?なんでその女を庇うのよぉ…」
みるみるうちに悲しみを深くさせた彼女は、膝から崩れ落ちるなり、さらに涙をあふれさせた。
西園寺はため息を吐くと、高橋さんとやらに背を向け、私がいる方を振り向く。
そして、手を差し出してきた。
「大丈夫?並木さん」
「う、うん…」
私は平静を装いながら、西園寺へとお礼を告げた。
何はともあれ、助けてもらったのは事実だ。
とは言っても、こうなったのは全部西園寺のせいなんだけどね。