ワケあり王子のオトし方

だが、効果は全くナシ。
リーダー格の女は痺れを切らしたのか、あろうことか、私の頰を叩いた。


「ふざけんじゃないわよっ!! みんなの西園寺くんに言い寄って、アドレスを交換したなんて、ファンクラブの規約違反だわ!!」


そっちこそどうなんだ。帰ろうとしている人間を複数の人間で取り囲み、強行した挙句、ファンクラブの会員でない生徒に規約違反だとわけのわからない理由をこじつけて叩くのは。


「西園寺くんはみんなの王子様なのよ!?」


「身の程をわきまえなさいよ!!」


頰を叩かれた私を見て、女子たちは蔑むような目で見ながら、次々と言葉を吐いてきた。

叩かれた頰がじわじわと痛む。

全く、どうしてこんなことになったんだ。
西園寺をオトすと決めてから、ろくなことがないじゃないか。


(……めんどくさいなぁ、女って)


西園寺はこんな女たちに毎日追いかけ回されているのか。クソ野朗と心の中で叫びまくっていたが、今日だけは尊敬しよう。

彼女たちは吐くことを全て吐けば、満足して去るはずだ。それまでの我慢。

視界の端にいる女子が、ペットボトルを持つ手を挙げたのが見える。

水を掛けられることを覚悟した私は、ぎゅっと目を閉じた。
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