ワケあり王子のオトし方
静まり返った空間に、はたはたと水音が響く。
それは、私に掛けられるはずだったものだ。けれど、掛けられていない。
予想だにしなかった未来を確かめるために、私はゆっくりと目を開けて、固まった。
「さ、西園寺くんっ……」
濡れているのは私じゃない、別の女子だった。
女子の一人が持っていたペットボトルは、その傍らに立つ西園寺の手にある。
(ど、どういうことなの…!?)
現状が全く理解出来ない。私に掛かる予定だったペットボトルの水が別の人間を濡らしているということは、掛ける直前に西園寺が止めて、そいつに掛けたということ…?
「質問に答えてもらっていいかな? …ここで何をしていた?」
西園寺らしからぬ地を這うような低い声に、女子たちが青ざめた表情をする。中にはわなわなと唇を震わせている者もいれば、泣きそうになっている者も居た。
「わ、私たちは、何もっ…!」
「そ、そうよ! 並木さんが暑そうにしていたからっ…」
何を言っているんだ、彼女たちは。まだ少し肌寒い春の日に、誰が冷水を所望するというのか。
それは、私に掛けられるはずだったものだ。けれど、掛けられていない。
予想だにしなかった未来を確かめるために、私はゆっくりと目を開けて、固まった。
「さ、西園寺くんっ……」
濡れているのは私じゃない、別の女子だった。
女子の一人が持っていたペットボトルは、その傍らに立つ西園寺の手にある。
(ど、どういうことなの…!?)
現状が全く理解出来ない。私に掛かる予定だったペットボトルの水が別の人間を濡らしているということは、掛ける直前に西園寺が止めて、そいつに掛けたということ…?
「質問に答えてもらっていいかな? …ここで何をしていた?」
西園寺らしからぬ地を這うような低い声に、女子たちが青ざめた表情をする。中にはわなわなと唇を震わせている者もいれば、泣きそうになっている者も居た。
「わ、私たちは、何もっ…!」
「そ、そうよ! 並木さんが暑そうにしていたからっ…」
何を言っているんだ、彼女たちは。まだ少し肌寒い春の日に、誰が冷水を所望するというのか。