ワケあり王子のオトし方
西園寺は冷笑を浮かべると、空になったペットボトルをリーダー格の女の足元に放り投げた。

カランコン、と寂しい音が鳴る。まるで、誰かの心の中を具現化したような。


「そうなんだ? 俺の目には、君たちの方が暑そうに見えるよ」


「わ、私たちは暑くなんかっ…」


「暑いよ」


反論の声を上げた女を、西園寺は冷ややかな眼差しで見下ろした。次いで、この世のすべてを凍てつかせそうな声音で言い放つ。


「見苦しい」


「っ…、」


西園寺は女子たちから視線を外すと、私の方を向いた。そうして、少しだけ微笑むと、ゆっくりとした足取りで私の目の前へとやって来た。


「大丈夫? 並木さん」


その言葉とともに、西園寺の手のひらが私の頭の上に優しく乗せられた。

コクリと頷けば、西園寺は安心したように笑った。

その笑顔はとても綺麗だった。作り笑顔を浮かべてばかりの私とは、月とスッポンなんじゃないかってくらいに。
< 49 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop