ワケあり王子のオトし方

西園寺は私から手を離すと、片手をポケットに突っ込み、女子たちの方を向き直った。

さすが王子様の異名を持つ人だ。私を背に庇うように立っている。


「水遊びは程々にね。…人を虐めるのも、ね」


背を向けられているから、どんな表情をしているのかは分からない。けれど、微笑んでいるんじゃないかと思った。


「さ、西園寺く、」


「俺は君たちのような人間が大嫌いだってこと、覚えておいてね。あと…」


西園寺は震える女子たちから、私へと視線を移す。

白くて綺麗な手が、私の頰へと添えられた。


「……西園寺くん?」


目が合った瞬間、ただ、まずいと思った。

だというのに、囚われたように、動けなくて。


「ーー並木さんは、俺の彼女だから。次は容赦しないよ」



にっこりと微笑んだヤツの口から出たものは、とんでもない言葉だった。
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