俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
どんな反応をされるのか怖くて大志くんのことを見られずにいると、「ふは!」と、空気を大放出するような笑いが聞こえて顔をあげる。
「なーんだ、そんなこと?」
「へっ?」
「深妙な顔してなに言い出すかと思ったら……いいよ、べつに、それぐらい」
私の机、いっこぶん。私と彼の距離は、それぐらい。頬杖をつく彼が日誌を覗き込んで「もう少しじゃん」と笑った。
笑うと、えくぼが浅くできるらしい。こんな近くで見ないと気づかないぐらい。
「なに話す?」
「な、なに話しましょうか……」
「なんで敬語?」
「なんとなく……」
緊張を解きたいと思うのだけれど、どうしてもできないでいる。
イケメンで、優等生で、居残りしている私に構ってくれる優しい同級生。
……あぁ、たぶん、私。
恋の、目の前にいる。そう感じている。
好きに、なりそう。なり、たい。
「大志くんは……」
「ん?」
「好きな子とか、いないの……?」
気になったことをありのままに聞いた。だけど私は間違った質問をしてしまったのかもしれない。
大志くんの顔が明らかに変わったのだ。
口元から笑みが消え、目が、冷たくなった。
「……好きな人なんていないよ。俺、そもそも恋愛に興味ないし」
「そう、なんだ……」
「うん」
言葉たちが妙に刺々しく感じたのは気のせいなのだろうか。気のせいであってほしいけれど。