俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
白い歯を見せて、目を細めて笑う私の好きな人。人気者の彼はみんなに挨拶をしている。
ふと目が合って、「おはよう」と言われた。しまった。私から挨拶しようと思っていたのに、先を越された。
私は目をそらして「お、おはよう」とぎこちなく挨拶を返す。
……やっぱり、ドキドキする。とても目を合わせていられない。
席に着いた彼は瞬く間にクラスメイトに囲まれている。弾けた笑顔だ。
だけど、よかった。挨拶してくれて。バーベキューは、避けられていたわけじゃない……んだよね?
しばらく遠目から大志くんのことを眺めていると、結衣羽がやってきて他愛のない話に花を咲かせた。
同じ空間に、教室内に、いる。お互い違う人と話していても、すこし耳をすませば声が聞こえる。存在を確認できる。会えなかった長期休みを経て、それだけで特段に幸せを感じる。
その日行われた帰りのホームルームでは、文化祭についての打ち合わせがされた。クラスでの出し物についての話し合いになった。
学級委員でもある大志くんともうひとりの学級委員である女の子が主体となって話が進んだ。
「なにかやりたいことある人ー?」
大志くんの問いかけに、男子も女子も次々に手を挙げて候補をあげていった。改めてノリのいいクラスで良かったと思った瞬間だった。誰もなにも意見を言わないクラスも、きっとあるだろうに。
おばけ屋敷、カフェ、クレープ屋さん、ダンス発表……。
たくさんの案が黒板に書き出される。一通り意見が出終わったあと、多数決をすることになった。ダンスは小学生の頃の学芸会でしかやったことがないから無理だなぁ。楽しそうだけど。
無難にカフェのときに手を挙げた。まあまあの数だった。意外とおばけ屋敷とクレープ屋さんに票があまり集まらなかった。