俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
流れる変な空気に、居心地が悪くなり、必死にシャーペンを滑らせる。
余計なことを聞いてしまったと、後悔したってもう遅い。
早く書き終えて帰ろう。一刻も早くここから逃げたい。
「……なんでみんな恋したがるの?」
「えっ?」
「俺、本気でわかんないんだけど」
走らせていたシャーペンを止めた。怪訝な顔で不機嫌そうな声と、その言葉。
「楽しい、から……じゃないかな?」
「楽しい?恋が?」
「うん」
したことのない私にはわからないけれど、そう思う。
「だって、友達のインスタとかツイッター見てるとすごく楽しそうだし、それに彼氏のこと話す友達はいつも幸せそうに笑うから……」
みんな、いつも楽しそうなんだ
SNSにアップされた写真は、いつも笑顔。
デートで訪れたという場所には"私も行ってみたい"と思わされる。
私も、彼氏がほしい。
オシャレな場所に行ったり、美味しいものを食べに行ったり、映画を観たり、カラオケに行ったり……。
私も、彼氏とそんなことがしたい。
好きな人と、思い出をつくる。そんな素敵なことって、他にない。
恋がしたい。
「それってさあ、飾り、だよね?」
「飾り……?」
「毎日充実してます、楽しいですってアピール?俺には正直そう見えるんだよね。そのための彼女だったり彼氏なんじゃないの?」
「…………」
言葉が出ない。
今、私、ものすごい衝撃を受けている。
恋人が飾りって、なんだそれ、どういうことだ?