俺がこんなに好きなのは、お前だけ。



「ん、じゃあ当日よろしくな」

「うん……っ」

「……よかった。実は午前と午後、お前と俺、わざと合わせてたんだ」

「そうなの?」

「うん。最初から誘おうと思ってたから」



流れる和やかな空気につられるように笑った。


恋をしてから私の心はとても忙しい。
モヤモヤしたり、それがいっきに晴れて幸せな気分になったり。


大志くんの言動に一喜一憂して、踊らされている。


嬉しいことが積み重なると、気持ちも膨れあがる。でも悲しくて辛いことがあったって、気持ちが減ることは不思議とない。


この恋を諦めるという選択肢は私のなかで元々ないからかな。


どうしたらいいのかわからなくなっても、私のなかでの大志くんへの気持ちはどうやったってなくならないし、それならもうずっと想ってるしかないじゃないか。


付き合うか、付き合わないかは、私だけの問題じゃない。


でも、もし、私にできることがあるなら、大志くんのためにできることがなにかひとつでもあるなら、私はなんでもしたい。


もし恋に一歩踏み出せない理由があって、その理由が取り除けるものなら、私は協力したい。



「一緒に帰ろう」



今日は私から声をかけた。
その日の放課後、すべての授業が終わって、かばんの持ち手をぎゅっと握りしめた私はおもむろに大志くんの席に向かった。


散々悩んで振り絞った勇気は一瞬で使い果たした。


顔をあげて目があったときに、なにかが私のなかで弾けるような感覚に陥った。



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