俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
ぎゅっと、手を繋ぐ力が強くなる。
私は返事をする代わりにその手を強く握り返した。
待つよ。それぐらいなら、私にだってできる。好きだもん。大志くんのこと。
それ以外できないよ。なくならない気持ちは、心の中で育てるしかない。
駐輪場にふたりで向かって、そのあと「今日はちょっと歩こう」と大志くんの提案で歩くことになった。
自転車を押して歩く大志くんに続いて校門を抜けようとしたときだった。
「大志……!」
突然、女の子の声が飛んできた。ふたりほぼ同時に立ち止まった。
ふと目に入った女の子を見て、私は首を傾げた。
違う学校の子だ。大志くんの知り合い?
私たちが着ているブレザーの制服とは違って、黒のセーラー服を着たその女の子は、私には見向きもせずに大志くんにだけ熱い視線を送っている。
その目線を辿るように大志くんを見ると、眼を見張る。
固まっている。強張った表情をしたまま、微動だにしない。
「美夜?」
大志くんは、その子のことを"みよ"と呼んだ。
そして、繋いでいた手が、離された。
「……なにしに来たんだよ」
「話したくて……」
「俺はお前と話したくねぇ。んだよ、今さら……」
「……っ……」
傷ついたような顔をしたふたりは、同じ顔をしている。流れる不穏な空気に私はただその場に立ち尽くすことしかできない。状況が掴めない。
ハンドルを握る大志くんの手が震えているように見える。大きくて頼もしい背中も心なしか小さくなっている気がする。
向かい合っている美夜って子も、今にも泣き出しそうだ。