俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
ただ、大志くんが好きなだけなのに。
取られたくないって、美夜ちゃんに対して敵対心でいっぱい。
だけど、大志くんが私以外の女の子に優しく微笑みかける姿や、手を繋ぐ仕草、自転車でふたり乗りしているところなんて……見たくない、もん。
学校の校門まであと数百メートルのところまでたどり着いたとき、私の隣で自転車がブレーキをかけて止まった。
驚いたのも束の間、自転車に乗っていた人物と目が合う。
た、大志くん……?
「……目」
「目?」
「……腫れてんな」
指摘されて、とっさにうつむいた。朝から会えた喜びで、いま自分がひどい顔をしていたことをすっかり忘れていた。
「また泣かせちまったな、ごめん」
「ううんっ、泣いてないよ!顔がむくんでるだけ」
どうか、謝らないでほしい。そんな風に、悲しい顔をしないで。
「私は平気だよ?」
恋をこれ以上、嫌わないで。
もう悲しくないよ。もう、泣かないよ。
私が苦しかったのは、君に恋をしているからだけど、けして君のせいじゃない。
「……そうか」
「うん」
幸せな恋をしよう。笑えるふたりに戻ろうよ。
もう望まない。付き合いたいって、高望みしないから。
そんな切なそうに、複雑な眼差しで私のことを見ないで。
私は、大志くんの重荷になりたくないんだよ……。
どちらからともなく歩き出して、教室へと向かった。ふたりの間に特別な会話はなかった。
***