俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
私は黙って頷いた。
ふたりでやって来たのは、以前に大志くんとふたりで来たことのある駅前のカフェだった。道中に互いに自己紹介をしあった。
私は大志くんから彼女の名前を聞いていて知っていたけれど、それは言わなかった。
「ここ、前に来たことがあって、お気に入りなんだぁ」
「そう、なんだ」
誰と?
言いたかった言葉は、ぐっと飲み込んだ。聞いたところで、私が傷つくだけかもしれないし。聞きたくなかった。
「ももかちゃんと大志って、どんな関係なの?」
店員さんが頼んでいた彼女のコーヒーと、私のカフェラテを運んできたあと、すぐにその質問をされて飲んでいたカフェラテを吐き出しそうになる。
い、いきなりだな……、
「……友だちだよ」
「友だちなのに、手を繋ぐの?」
鋭い指摘におし黙る。カフェラテの中の氷が溶けて、カランと動いた。
大志くんとふたりで来たときはあんなに居心地がよかったのに、今は最高に居心地が悪い。
そういえば昨日私たちは手を繋いで歩いていたんだっけ。
「私、大志のことが好きなの」
「うん……」
「私たち、付き合ってたんだ」
「うん……」
「でも、別れた。私から、一方的に。別れてって言ったの」
うつむいていた顔。彼女の声がだんだん水分を含んだように濁ってきたのがわかって、目線を上げた。そしたら彼女が案の定泣いていたので驚いた。