俺がこんなに好きなのは、お前だけ。


みんな同じ格好をしているはずなのに、大志くんが一番かっこよく見える。"好き"のフィルターがかかっているのかもしれない。


だけど細く、スタイルがいい大志くんにはカフェの店員さんの姿は相性がいい。


目が合う。すると大志くんが私に向かって真っ直ぐ歩いてきた。



「今日は頑張ろうね、小野さん」



優等生の大志くんだ。にっこり微笑まれて、私も同じように笑って頷いた。



「あと、午後のことだけど……」

「うん、楽しみだね」



食い気味に答えると大志くんが少しだけ驚いたように目を見開いて、その後にまた笑ってくれた。


心に切なく広がる淡いブルー。泣きたくなる気持ちをくっと堪えて私も笑顔を絶やさないように努めた。


体育館で始まりの挨拶がされて、校長や生徒会長やらが壇上でたくさんのことを話していた。
それも終わって教室に戻ると、チラホラと他校の生徒や親御さんなどがやって来て、学校は賑やかになっていった。


私たちのダンス&カフェも、大盛況だった。



「い、いらっしゃいませ……」



アルバイトをしたことのない私は挨拶すらままならなかった。クラスメイトにくすくす笑われて、とても恥ずかしい。


肩身の狭い思いをしていると、肩を優しく叩かれた。
顔を後ろに向けると、そこには大志くんがいた。



「いつものお前らしく笑ってればいいから」



耳元で、小声で囁かれた台詞。やや掠れた声で、色気を感じた。

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