俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
続きは、言わない。大志くん、隠れんぼしよっか。
「ごめん、先生の手伝いで呼ばれたから30分後に中庭のベンチで待ち合わせでもいいかな?」
午後を担当しているクラスメイトと従業員役を交代した。
ようやく慣れない接客から離れることができて、肩の荷がすごく軽くなった。
着替え終えた大志くんが廊下で私のことを待っていた。すれ違う他校の生徒や、来客で賑やかな校内。
だけど私は嘘をついた。
先生から頼まれた作業なんてない。
「うん、わかった」
「ごめんね、あとでね」
背を向けた。
歩き出した足は、行く先を決めていない。
この前美夜ちゃんと話したとき、30分後の時刻に中庭のベンチに座っておくように言っておいた。
ふたりは再会する。きっと積もる話も、あるだろう。
大志くんは私のことなんか忘れて話に耽るに違いない。
私はひとりでこの学校のどこかに隠れているから。
もし、君が私と恋をしてくれるというのなら、探しにきてほしい。
これは、はじまりの合図もない隠れんぼ。
私は、君を試すよ。それぐらい許してほしい。
嘘つきくんには、これぐらいしても、いいよね?
来ることはないってわかっているけれど、期待せずにはいられない。
──君はいま、誰のことを想っていますか?