俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
"恋なんて興味ない俺、かっこいい"とでも思ってるのかな?自分に酔ってる?
ぷりぷり怒りながらもようやく日誌を書き終えることができた。職員室までの道のりを歩く。担任に提出すると、さっさと帰ろうと下駄箱まで向かった。
靴を履き、外へ出ると空は夕日で赤く染まっていた。
「私、大志くんのことが好きです……っ」
そう聞こえたのは昇降口前の階段を一段降りたときだった。
聞こえた方向、右斜め後ろを見る。昇降口を正面にした左側の向こう。
恐る恐る足音を立てないように壁にへばりついて、角のその先を見る。
運動場と校舎の間にある大きな木。その木の下で見たことあるとなりのクラスの女子と大志くんが向き合って立っていた。
嘘、いまの、告白……?
ふたりにバレないように細心の注意をはらいながら、でも、もっとふたりの様子を見たいという葛藤に苛まれる。
大志くん、なんて返事するんだろう……?
「ごめんね、きみとは付き合えないよ……」
大志くんの声は優しさを含んでいた。噂とは違った断り方で拍子抜けした。
なーんだ、結構普通じゃん。
「どうして?好きな人、いるの?」
「いないよ」
「じゃあ彼女もいないんだよね?」
「うん」
「私じゃダメ、かな?私とじゃ付き合えないかな?お試しからでもいいから……」
すがるように女の子が大志くんの制服を掴んだ。私はそれを固唾を飲んで見守っていると「はぁ……うっざ」と遠くにいるはずの私ですらビビってしまうほどの低い声がどこからか聞こえた。
周りには私を含めて3人しかいない。じゃあ今の声って、もしかして……。
「あんた、やっぱりうざいよ」