俺がこんなに好きなのは、お前だけ。


でも、だからか、俺は素の自分を小田ももかには見せられた。
いい格好をしようと、気を張ることがなかったからかもしれない。


べつに、嫌いなわけじゃない。
ただ、俺が信じられない恋を、未経験のくせに真っ直ぐに信じている、その、無邪気さが放っておけない要因だったのかもしれない。いま、思えば。


小田ももかを泣かせて傷つけた佐藤のことは許せなかったし、夏祭りで気安く小田ももかを連れ出そうとしたクラスメイトにもクソほど腹が立った。


自分で、自分の感情がわからなかった。

嫌いか、好きかと問われたら、「好き」なのかもしれない。


だけど確信が持てなかった。
また、同じことを繰り返したくなかったんだ。


だから彼女の告白の返事はうまくできなかった。
友だちのままが、よかった。
いまの関係が居心地よくて、恋人になっていつか終わりを迎えるぐらいなら、このままがいいと、そう考えたのだ。


離れたほうがいいんじゃないかって、本気で考えた。


本気で恋できないのに、距離だけ近づくのも、お互いに辛いんじゃないかって。だから、クラスの大半が参加したバーベキューにも参加しなかった。


だけど夏休みが明けて、あいつの顔を見たら、ダメだった。
距離をとることなんて、できなかった。俺が、耐えられないのだと悟った。


こんなのもう、好きじゃねぇか……。

俺のなかで大きくなっていく、得体の知れない感情。


熱くて、でも、ときに痛む。たくさんの色に変化する。


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