俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
あいつが笑っていれば、俺も嬉しくなるし、あいつが泣きそうな顔をしていたら、俺も辛くなる。
心がリンクしていく。そんな感覚だった。
ふたりの距離が近くに連れて、俺の心はあいつと同じ温度に、そして同じ色に染まっていく。
こんな感覚は、生まれて初めてだった。
***
30分が経ち、指定された中庭までやって来た。たくさんの人で賑わっている校内、それは外も同じだった。
人をかきわけるように進んで、目的地のベンチまでたどり着いたとき、俺は自分の目を疑った。
目の前にいたのはももかじゃなくて、美夜だったから。
「大志……?」
「美夜、なんで、ここに……」
「ももかちゃんに誘われて。ここにこの時間に来てって言われたから……」
「……っ……」
あいつ、余計なことしやがって。
踵を返してももかのことを探そうと美夜に背を向けたときだった。
「待って、大志……!すこしだけ話をさせて……!」
腕を掴まれて引き止められる。振り解こうと思ったけれど、またこうして会いに来られても困ると思い直してふたりでベンチに座った。
あの日以来、本当に俺に話しかけてこなかった美夜なのに、どうして急に……。
「ごめんね、迷惑かけて」
「……いや」
「あのときのこと、話したくて……」
ガヤガヤと騒がしいなかで、俺たちだけ神妙な面持ちで真剣な話をする。
美夜はあの頃と変わらずに美人だと思う。
だけど俺の目にはももかのほうが可愛く見えてしまう。
あいつはチビだ。スタイルがいいわけでもない。顔も普通。だけど、誰よりも純粋で、真っ直ぐで、よく笑い、いい意味で感情に素直に生きている。
それがあいつを纏うオーラに出ていて、男は惹きつけられる。
実際にあいつは特別美人なわけでもないのに、なぜか男からの人気がある。