俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
「大志は知らないと思うんだけど……。付き合ってた頃ね、私、大志のこと好きな女の子たちからいじめられてたの」
「はっ?」
「それが辛くて逃げ出した。だからなんだって思われてもしょうがないと思ってる。でも……」
「…………」
「ずっと大志のそばにいてあげられなくて、負けちゃってごめん。ずっと、大志のことが好きだったよ」
知らなかった真実に言葉が見つからない。ずっと裏切られたと思いこんでいた。
「本当はね、大志に会ってもう一度やり直そうって言おうと思ってたんだ。でも、やめた」
「……っ……」
「ももかちゃん、いい子だね。今度こそ、大切にしてあげなね」
となりを見ると、にっこり微笑まれる。
2年前より確かに大人びた彼女のその表情に、残り香が鼻をかすめるように淡く切ない感情が心に広がった。美夜と再会して、はじめて面と向かってちゃんと美夜の顔を見た。
俺は恋をしたことがない。誰も好きになったことなんかないって、そう思ってた。でもそれは、美夜へのあてつけだったのかもしれない。
それだけ振られたことがショックだったんだ。
いままでずっと、くだらない意地を張っていた。
俺は確かに、あの頃、お前に恋をしていたのかもしれない。
「美夜、すまん」
「え?」
「あの頃お前が苦しんでたことに、気づいてやれなくて。ひどい言葉で傷つけたよな。マジでごめん」
いじめられていたことに気づかなくて、ごめん。
美夜がいちばん辛かったはずなのに。別れを選ばせたのに。会いに、来てくれたのに。
「大丈夫。大志が好きになった女の子が、あの子で本当によかった」
「…………」