俺がこんなに好きなのは、お前だけ。



「あんた、顔はかわいいんだから、黙ってればきっとすぐ彼氏ぐらいできるよ」

「黙ってればってどういうこと?」

「そのままの意味」



そのままの意味って言われましても、わからないから聞いているのですが。


かわいくないのに、私。


肩につくほどの髪の毛はくせっ毛で、ゆるいウェーブがかかっているのだが、これが私のコンプレックスでもある。


生まれつき色素が薄くて、若干茶髪に見える髪色。黒髪の綺麗なストレートにものすごく憧れる。


背は低いし、胸も小さくてずん胴だし。足だって太い。


からかわれたことの対してむっと頬を膨らませていると「そんなに私といてつまらないなら、もう桃香に付き合ってドーナツ食べに行ってやんないよ?」と、言われて、焦る。



「それは困る!」

「ならもうため息吐かないの」

「うう、わかった。がんばる」

「偉いぞ、ももか」



結衣羽に褒められて上機嫌になる。これぞ親友の力だ。
ニヒヒと気持ち悪く笑うと「ちりとりの中のゴミ捨てて来て」と言われて動く。


親友さんよ、私の扱い方がうますぎませんか……。


気を取り直して掃除の続きを始めた私たち。


ゴミ箱にちりとりの中身を入れて腕まくりをする。中身がパンパンで、今にも漏れてきそうなゴミたち。中の袋ごと取り出して縛ると、焼却炉まで持って行こうと結衣羽に声をかけた。



「これ持って行ってくるね」

「ありがとう」



重たいそれを持ち上げて、歩き出そうとしたそのときだった。私が持っていた重たいものが消えた。



「小田さん」



名前を呼ばれて、顔をあげる。



「俺が持って行くよ」



持っていたゴミ袋をすっと私から取ってしまった人物に目を見開く。クラスメイトの佐野大志くんだった。


彼はいわゆる優等生くんだ。成績優秀でリーダーシップもあって、コミュ力も抜群に高い。入学してすぐからクラスの人気者になった人物。


黒の髪の毛は短く爽やかで、背が高く、いつも優しく笑う、絵に描いたような人気者だ。



「い、いいよ。私、平気だよ?」



思わず彼の手から、ゴミを取り返そうと、手を伸ばした。



「ううん。こんな重たいもの、女の子に任せられないよ。俺が持っていくから、小田さんは続きしてて」



にこやかに笑って、彼が荷物を背中のほうに隠した。



「ありがとう……ございます……」

「ふはっ!なんでタメなのに敬語?」

「なんと、なく……」



取ってつけたような敬語で、自分でもおかしいとは思った。
でも目の前の彼が爽やかに微笑んでいることに気づいて、そのあまりの格好の良さに赤面してしまう。


くっ……イケメンってほんとずるい。


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