俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
控えめに声を出すと、佐野大志は視線を窓の外に投げた。
私は続きをやる素振りをして、チラチラと目の前の男を見る。
なんで急に優しいんだ……?
なにを企んでるの……?
佐野大志はみんなといるときの爽やかな笑顔や明るさを封印したように、いまはすごく冷静で落ち着いている。
いつもはパッチリ見開かれている目も、伏せがちで、だからか二重の線がよく見えて色っぽい。中性的な顔立ちがより際立っている。
「なんで……」
「ん?」
「なんで嘘ついてるの?」
口から出た言葉に私も驚いたし、佐野大志も驚いている。
そんなこと言うつもりは毛頭なかったのに。
「嘘って?」
「どうして優等生を演じてるの……?」
最近の私にはどうも、そのように見えてしまう。昼間の、にこにこ笑っている佐野大志は無理して演じているんじゃないかって……。
そんなに無理して笑わなくても、いいのに。
皮肉を言わず、黙っていれば、笑わなくても十分佐野大志は魅力的な男だ。
顔だって整っているし。性格は悪いけど、でも笑ってたって、黙ってたって、それは変わらないし……。
「べつに演じてねぇーけど?」
「じゃあなんで私といるときだけそんなに冷たいの?私が嫌いだから?」
真っ直ぐに佐野大志を見ると一瞬だけ目を見張って、でもすぐに「そんなんじゃねぇーよ」と目線を落とした。