俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
「お前のことはべつに、嫌いじゃない」
どくどくと、心臓が駆け足で血を全身に送っている音がする。低い音が、身体中に響いている。
嫌われていると思っていたから、拍子抜けしてしまう。
「お前は?」
「えっ」
「お前が俺のこと嫌いなんだろ?」
どくどくと、また、うるさくなっていく。
「嫌い……じゃ、ないよ」
「嘘つきなやつだな。俺のことが嫌いって宣言して帰ったろ、この前」
「あ、あのときはだって……っ、恋愛のこと、バカにしてきたから……っ」
考えつくよりも先に口走ってしまったことが、恥ずかしくて、カッと顔に熱が集中する。顔を見られたくなくて、うつむける。
またこんなこと言うとバカにされるかもしれない。
「やっぱり俺にはわかんないんだよな、その気持ち」
「…………」
「どうしてそんなに恋愛がしたいんだよ?」
チラッと彼を見ると、顔が真剣だった。バカにされるというよりは、本当に私の意見を求めているといった感じだった。
「……ずっと憧れてたんだもん。友達が好きな人のことを話すとき、すごくキラキラしてて、可愛くて、いいなって。私も好きな人ほしいなって」
「…………」
「でもできなくてさ。私は他の人となにか違うのかなって。私にダメなところがあるから、どこか変だから好きな人ができないのかなって、そう考えちゃって……」