俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
そこで言葉をやめた。まばたきを繰り返して、机の上のプリントを見た。わけのわからない数字たちがゆらゆらと揺蕩って見える。
私なんで、こんなこと打ち明けているんだ?
なんで恋がしたいかを説明したかっただけなのに。どうして悩みなんて……。
「恋愛なんて、どう足掻いたって本気になれねぇーよ。誰かを本気で好きになんてなれないんだよ」
佐野大志のその言葉は、声は、どこか悲しげな雰囲気をまとっていた。
だからだろうか。恋愛を否定されているのに、どうしてかこの前のように怒れない自分がいたのは。
「どうして?」
「俺に告白してきたやつ、全員いまも俺のこと好きだと思うか?」
「それは……」
わからない。この前ひどい振られ方をしたって泣いていた女の子はいま、違う男の子を好きになっていることを最近知った。
「甘いんだよ、全員。それでよく"本気で好きなんです"なんて言えるよな」
「…………」
「だから俺は恋なんて信じないし、したくもない」
「……でも、忘れられない人がいるんでしょ?」
声が震えたのは、このタイミングで聞いてよかったのか不安だったから。
佐野大志は眉間にシワをぐっと寄せて「あ?」と低い声をあげた。
さらに不機嫌になったのは、目に見えていた。
「なんだそれ。誰から聞いたんだよ?」
「う、噂だよ」
「デタラメもいいところだな。そこまでくると笑えるわ」