俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
芽生えたのは……


春から夏へと季節は変わろうとしている。
朝目覚めて、寝ぼけ眼で準備を整え、登校した。
快晴で、ところどころにある雲は綺麗な白。


同じ制服を着た人たちに紛れて登校ピークの校門を抜けた。


結衣羽と下駄箱でばったり会って「おはよう」と挨拶を交わしたときだった。


下駄箱内のうわぐつ上に、手紙が置いてあったことに気づいたのは。



「はっ?」

「えっ、ラブレター!?」

「そ、そんなわけ……っ、誰かの下駄箱と間違ったんじゃない!?」



となりで興奮気味に声を荒げた親友をなだめる。自分に言い聞かせるといった意味もあった。


口の中にたまった唾を飲み込んで、手紙を手に取る。

そして、開いた。



【昨日の放課後、佐野大志くんと一緒にいるところを見ました。どんな関係ですか?】



書かれてあった短文。読み終えても、理解ができなかった。


なに、これ……。



「うわ、なにこれ……気味が悪い」

「男の子の字、だよね?」



だってお世辞にも綺麗だとは言えない。筆圧が強くて、カクカクした字をしている。


どこにでもある真っ白な便箋の中身は、よく見るとノートの切れ端が使われていた。
切り取り方が雑だったのか、右隅が丸くなっている。


ほんと、気味が悪い。誰がこんなこと書いて私の下駄箱に入れたの?


昨日私と大志くんが一緒にいたことを見ていたってことだよね?



「ストーカー?だったりして……」

「え、やだ、脅さないでよ」



ストーカーって、そんな、まさか。
私に?


ふたりして困り果て、その手紙を凝視していたとき、「なにしてんの?」と声がかかった。振り向くとそこにいたのは大志くんだった。


< 36 / 143 >

この作品をシェア

pagetop